電気代の節約を意識する際、待機電力に関心を持つ方は多いでしょう。
しかし、コンセントをこまめに抜くのは本当に意味があるのか、どの家電の待機電力が高いのか、抜くと故障しないか、といった疑問を持つ方も少なくありません。
結論として、待機電力の節約は家電により効果が異なり、コンセントを抜かない方がよい機器も存在します。
本記事では、待機電力の基本的な意味から、家電別の一覧表、コンセント抜き差しの正しい判断基準までを解説します。
待機電力節約のコスパを知り、家庭に合った合理的な節約方法を実践したい方は、ぜひ参考にしてください。
待機電力とは?コンセントを抜くといくら節約できる?

電気代の節約を考えたとき、待機電力という言葉を耳にしたことがある方もいるでしょう。
ここでは、待機電力に関する基本的な知識として、次の3つのポイントを解説します。
- 待機電力の基本的な意味と発生する仕組み
- 家庭の電気代に占める待機電力の平均的な割合
- 待機電力の節約は「意味ない」といわれる理由
それぞれの内容を詳しく解説します。
待機電力とは家電の電源オフでも消費される電力のこと
待機電力(待機時消費電力)とは、家電製品の電源がオフの状態でも、コンセントに接続されているだけで消費される微量の電力のことです。
待機電力が発生する主な理由は、リモコンからの信号を待つ受信機能や、時計機能、設定内容を記憶するメモリなどを維持するために、常に微弱な電力が使われているためです。
このように、家電がすぐに使用できる便利な状態を保つために、電源オフ時でも電力が消費されています。
【図解】待機電力が発生する仕組み
家庭の電気代に占める待機電力の割合は平均約5%
経済産業省 資源エネルギー庁の調査によると、一世帯あたりの全消費電力量のうち、待機電力が占める割合は夏季で6.0%、冬季で5.5%とされています。
二人以上世帯の月平均が約12,008円であることを考慮すると、年間で7,900円~8,600円程度になる計算です。
コンセントに差しっぱなしにしているのみで、これだけのコストがかかっている可能性があるといえるでしょう。
待機電力の節約は意味ないといわれる理由
「待機電力の節約は意味がない」という意見もありますが、これは家電や使用状況によって効果が大きく異なるためです。
主な理由として、近年の家電製品は省エネ性能が非常に向上しており、10年前の家電などと比較して待機電力が大幅に削減されている点が挙げられます。
実際に、大手家電メーカー各社は待機電力を大幅に抑える技術開発を進めており、近年のモデルでは節約効果がより限定的になっています。
そのため、節約できる金額が、毎日コンセントを抜き差しする手間に見合わない、つまりコストパフォーマンスが悪いと感じる方が増えていると考えられるでしょう。
意味がないわけではなく、古い家電などでは依然として効果が期待できますが、最新の家電ではその効果が限定的になっているのが実情です。
待機電力が高い家電一覧と節約額の目安

待機電力の節約効果は、家電によって大きく異なります。
やみくもに対策するのではなく、どの家電の待機電力が高いのかを知り、効率的に節約に取り組むことが重要です。
ここでは、次の3つのポイントを解説します。
- 待機電力が高い家電の傾向と見分け方
- 待機電力が高い家電トップ5(一覧表)
- 待機電力の電気代を計算する方法
これらの情報を参考に、家庭の家電を見直してみましょう。
待機電力が高い家電の傾向と見分け方
待機電力が高い家電には、次のような共通の特徴があります。
- リモコンからの操作を常に待っている
- インターネットに常時接続している
- 時計や温度を表示、維持している
たとえば、ガス給湯器のパネル、通信ルーター、保温機能付きの電気ポットなどがこれに該当します。
家庭の家電がどれくらい待機電力を消費しているかは、取扱説明書やメーカーの公式サイトに記載されている「待機時消費電力(W)」の項目で確認できます。
【一覧表】待機電力が高い家電トップ5と節約目安
ここでは、一般的に待機電力が高いとされる主な家電製品と、その節約額の目安を表にまとめます。
これらの家電を長時間使用しない場合は、コンセントを抜くことで節約効果が期待できます。
待機電力が高い家電と節約目安
| 家電製品 | 待機時消費電力(目安) | 1年間の待機電力代(目安) | 主な待機電力の理由 |
|---|---|---|---|
| テレビ | 約8.1W | 約2,200円 | 高速起動機能の維持・リモコン受信待機 |
| プロジェクター | 約6.3W | 約1,700円 | リモコン受信待機 |
| ヒートポンプ式給湯機 | 約5.7W | 約1,550円 | リモコン表示・受信待機・時計・タイマー機能 |
| 回線終端装置 | 約5.7W | 約1,550円 | 通信待機(受信待機) |
| ガス給湯器 | 約3.9W | 約1,060円 | リモコン表示・受信待機・マイコン(制御基板) |
※出典:平成24年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書概要
ただし、これらはあくまで目安であり、製品の製造年や機種によって実際の待機電力は大きく異なります。
正確な数値は自身の家電の仕様を確認してみてください。
【図解】待機電力が高い家電ランキング
ガス給湯器
理由:リモコン表示、時計機能、受信待機
通信ルーター
理由:常時通信、ランプ表示
HDDレコーダー
理由:時計、録画予約、受信待機
エアコン (古い機種)
理由:リモコン受信待機
テレビ (古い機種)
理由:リモコン受信待機
※年間電気代は目安です(電気料金単価31円/kWhで計算)。
※製品の製造年や機種によって実際の待機電力は大きく異なります。
待機電力の電気代を計算する方法
待機電力にかかる年間の電気代は、簡単な計算式で自身でも目安を算出できます。
計算式は次のとおりです。
待機時消費電力(W) ÷ 1000 × 24(時間) × 365(日) × 電気料金単価(円/kWh)
電気料金単価は契約プランによりますが、目安として全国家庭電気製品公正取引協議会が定める31円/kWh(税込)を使うとわかりやすいでしょう。
たとえば、待機電力が1Wの家電の場合、1W ÷ 1000 × 24時間 × 365日 × 31円/kWh = 約271円となり、年間約271円の電気代がかかっている計算になります。
この式を使えば、家庭の家電の仕様(W数)からおおよそのコスト感を把握できます。
【実践】コンセントを抜くべき家電と抜かない方がよい家電

待機電力を節約しようとしても、この家電のコンセントは抜いてよいのか、故障しないか、と迷うこともあるでしょう。
家電によっては、コンセントを抜かない方がよいものも存在します。
ここでは、安心して節約に取り組むために、次の3つのポイントを解説します。
- コンセントを抜いても問題ない家電(節約対象)
- コンセントを抜かない方がよい家電(注意点)
- 無理なく待機電力を節約する具体的な方法
正しい知識で、安全かつ効率的な節約を心がけましょう。
コンセントを抜いても問題ない家電(節約対象)
待機電力の節約対象としてコンセントを抜いても問題ないのは、主に長期間使用しない家電や、抜いても機能や設定に影響が出にくい家電です。
コンセントを抜いても問題ない家電の例
- 扇風機や電気ヒーターなどの季節家電(シーズンオフ時)
- スマートフォンの充電器(充電していないとき)
- 古いテレビやDVDレコーダー(録画予約などを使っていない場合)
- 電気ケトル(保温機能がないもの)
- ドライヤー
- ミキサー
これらの家電は、使わない時間が明確なため、待機電力節約の対象として適しています。
多くの家電メーカーも、公式サイトなどで扇風機などの季節家電を長期間使用しない場合は、安全のためにもコンセントからプラグを抜くことを推奨しています。
コンセントを抜かない方がよい家電とその理由
一方で、節約のつもりでコンセントを抜くと、かえって不便になったり、故障の原因になったりする家電もあるため注意が必要です。
主な理由として、設定やデータがリセットされてしまう、録画予約が実行されない、機器の起動時に余計な電力を消費する、といった点が挙げられます。
コンセントを抜かない方がよい家電の例
- 冷蔵庫(食品の腐敗の原因)
- 通信ルーター(インターネット設定のリセット、常時接続の維持)
- HDDレコーダー(録画予約の失敗、時計のリセット)
- エアコン(シーズン中の待機電力でコンプレッサーを保護している機種がある)
- 温水洗浄便座(設定や時計のリセット)
- 固定電話機(FAX機能や留守番電話機能の停止)
これらの家電は、待機電力を消費することに意味があるため、無理にコンセントを抜かない方がよいでしょう。
とくに通信ルーターやレコーダーは、メーカーが電源をリセットする場合を除き、コンセントを抜かないでくださいと説明書で注意喚起しているケースが一般的です。
無理なく待機電力を節約する具体的な方法
コンセントを毎日抜き差しするのは手間がかかりますが、便利なアイテムを活用することで無理なく待機電力を節約できます。
最もおすすめな方法は、スイッチ付きの節電タップ(電源タップ)を活用することです。
テレビ周りやパソコン周りなど、複数の家電が集まる場所で使用すれば、タップのスイッチを一つ切るのみで、接続されているすべての家電の待機電力をまとめてカットできます。
また、家電自体に搭載されている省エネモードや節電機能をオンにすることも有効です。
これらの方法であれば、コンセントを直接抜き差しする手間をかけずに、効率よく節約に取り組めるでしょう。
待機電力の節約より効果的?電気代を根本から見直す方法

待機電力の節約は、電気代削減の一つの手段ですが、その効果は限定的かもしれません。
より大きな節約効果を求めるなら、視点を変えて電気代の根本を見直すことが重要です。
ここでは、節約のコスパ(費用対効果)という観点から、次の3点を解説します。
- 待機電力の節約(小さな努力)の限界
- 電気代は家電の使い方と電力プランで決まる
- 電力プランの見直しが節約の近道になる理由
待機電力の節約努力とあわせて、より合理的な節約方法を検討してみましょう。
待機電力の節約(小さな努力)の限界
これまで解説してきたように、待機電力の節約(ミクロな節約)は大切ですが、電気代を大幅に削減するには限界があります。
これまでの章で示した目安の通り、節約できる金額は家電1台あたり年間で数百円から数千円程度となるケースが多く、手間(努力)に対して得られる効果(リターン)が限定的になる場合も少なくありません。
電気代の節約をコストパフォーマンスで考えた場合、待機電力の節約努力よりも、さらに効果的な方法があるといえます。
電気代は家電の使い方と電力プランで決まる
毎月の電気代は、待機電力の削減のような家電の使い方(消費電力量)のみで決まるわけではありません。
それと同時に、契約している電力プラン(基本料金や電力量料金の単価)が大きく影響しています。
つまり、どれだけ節電に励んでも、契約しているプランそのものが家庭の状況に合っていなければ、電気代はなかなか安くなりません。
節約を考えるなら、この電力プランという根本的な部分にも目を向けることが重要です。
電力プランの見直しが節約の近道になる理由
待機電力を節約する努力と比べて、電力プランを見直す仕組みの最適化は、多くの場合、より合理的(コスパがよい)な節約の近道となります。
なぜなら、電力プランを見直して新電力などに切り替えることで、家電の使い方や生活スタイルを無理を変えることなく、電気代の基本料金や電力量料金の単価そのものを下げられる可能性があるためです。
たとえば、お得電力のように、現在契約中の大手電力会社よりも約3%安い料金設定を提供している新電力もあります。
待機電力を1W節約して年間約271円の節約を目指すよりも、プランを切り替えて全体の電気代を3%削減する方が、はるかに大きな節約効果(例:年間数千円〜)を期待できるケースが多いです。
手間をかけずに継続的な節約を実現したい方にとって、電力プランの見直しは最も優先的に検討すべき選択肢といえるでしょう。
【合理的節約】おすすめの電力会社とプラン

電力プランを見直すといっても、多くの新電力があり、どのプランを選べばよいか迷うかもしれません。
待機電力への関心度、つまり節約への意識やかけられる手間によっても、適したプランは異なります。
ここでは、節約のスタイルにあわせて、おすすめの電力会社とプランを2つ紹介します。
- お得電力:シンプルに大手電力会社より安くしたい方へ
- 市場電力:電気を使う時間を工夫できる方へ
- 申し込みは簡単 検針票を用意するだけ
自身のライフスタイルに合うプランを見つけてみてください。
お得電力:シンプルに大手電力会社より安くしたい方へ
待機電力を気にするような細かな手間をかけず、シンプルかつ確実に電気代を安くしたい方には、お得電力がおすすめです。
お得電力は、各エリアの大手電力会社が提供する標準的なプラン(従量電灯)と比較して、基本料金と電力量料金どちらも約3%安い料金設定が特徴です。
料金体系がシンプルでわかりやすいため、切り替えるのみで節約効果を期待できます。
運営会社は2025年時点で創業40年の歴史を持つ株式会社Qvouであり、安心して契約できる点も魅力です。
公式サイトでは、エリアと世帯人数別の詳しい節約額の目安も確認できます。
市場電力:電気を使う時間を工夫できる方へ
待機電力の節約のように、自身で電気の使い方を能動的に工夫し、さらに大きな節約を目指したい方には、市場電力が向いています。
市場電力は、卸電力市場の価格に料金が連動する市場連動型プランです。
市場価格は、太陽光発電量が増える昼間などに安くなる傾向があります。
そのため、コンセントを抜くことよりも、洗濯機や食洗機などの家電を使う時間を、電力価格が安い時間帯へ移動させる(ピークシフト) ことを意識すれば、電気代を大幅に節約できる可能性があります。
電気を使う時間帯を工夫できるライフスタイルの方にとっては、合理的な選択肢となるでしょう。
公式サイトでは、より詳細なシミュレーションも可能です。
申し込みは簡単 検針票を用意するだけ
電力会社の切り替えは、手続きが面倒だと感じるかもしれませんが、実際は非常に簡単におこなえます。
お得電力も市場電力も、申し込みはWebサイトで完結し、現在の契約会社への解約連絡なども原則不要です。
手元に現在の検針票(電気ご使用量のお知らせ)を用意するのみで、申し込みに必要な「お客様番号」や「供給地点特定番号」などを確認できます。
工事の立ち会いなども原則不要で、手軽に切り替えが完了します。
待機電力に関するよくある質問

最後に、待機電力に関して多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめます。
節約に取り組むうえでの不安や疑問を解消しておきましょう。
- 待機電力を測定する方法はありますか?
- 古い家電と新しい家電 どちらが電気代は高いですか?
- コンセントを抜き差しすると家電は故障しやすくなりますか?
- 電力会社を切り替えても電気の品質は変わりませんか?
それぞれの質問に回答します。
待機電力を測定する方法はありますか?
家庭の個別の家電がどれくらい待機電力を消費しているかは、ワットチェッカー(電力測定器)という機器を使って自身で測定できます。
ワットチェッカーは、家電のプラグと壁のコンセントの間に接続するのみで、現在の消費電力(W)や積算電力量(kWh)などを簡単に計測できる機器です。
家電量販店やインターネット通販などで購入できるため、気になる家電がある方は試してみるのもよいでしょう。
古い家電と新しい家電 どちらが電気代は高いですか?
一般的に、古い家電の方が新しい家電よりも電気代は高くなる傾向があります。
これは、家電の省エネ性能が年々向上しているためです。
待機電力のみでなく、家電が動作している(運転している)ときの消費電力そのものが、新しいモデルほど低く抑えられています。
もし10年以上前の古い家電(とくに冷蔵庫やエアコンなど)を使用中の場合、待機電力を細かく気にするよりも、最新の省エネ家電に買い替える方が、はるかに大きな電気代の節約効果を期待できるでしょう。
資源エネルギー庁が提供する「しんきゅうさん(省エネ製品買換ナビゲーション)」などのWebサイトでは、家電の買い替えによる節約効果をシミュレーションすることもできます。
コンセントを抜き差しすると家電は故障しやすくなりますか?
節電のための抜き差しで、家電がすぐに故障する可能性は低いですが、注意点が2つあります。
- 動作中に抜かない
- 頻繁に繰り返さない
とくにパソコンやHDDレコーダーなどは、動作中に電源を抜くとデータ破損や故障の直接的な原因になるため、必ず正規の手順でシャットダウンしてから抜いてください。
また、家電の電源を入れた瞬間には「突入電流」という大きな電力が流れます。
コンセントの抜き差しを高速で繰り返すと、この負担が内部の部品に蓄積し、寿命を縮める可能性があります。
コンセントの抜き差しによる家電の故障を避けるためには、機器の電源を正しく切り、1日に何度も繰り返さないことが重要です。
電力会社を切り替えても電気の品質は変わりませんか?
電力会社を新電力(お得電力や市場電力など)に切り替えても、家庭に届く電気の品質や安定供給は、これまでと一切変わりません。
なぜなら、どの電力会社と契約しても、実際に電気を家庭まで運ぶ送電網(電線や電柱)は、従来通り各エリアの大手電力会社(一般送配電事業者)が管理するものを共有して使用するためです。
停電しやすくなったり、電圧が不安定になったりすることは一切ないため、安心して切り替えを検討できます。
【図解】電力会社を切り替えても品質が変わらない理由
だから、品質も安定性も一切変わりません!
まとめ

本記事では、待機電力の基本的な意味、意味ないといわれる理由、待機電力が高い家電の一覧表、そしてコンセントを抜くべきかどうかの判断基準について解説しました。
待機電力の節約は、家電の種類や古さによって効果が異なり、コンセントの抜き差しという手間に見合わない(コスパが悪い)ケースもあります。
また、ルーターやレコーダーのように、コンセントを抜くことで故障や不便につながる家電にも注意が必要です。
待機電力というミクロな節約への努力とあわせて、電気代全体を見直すマクロな節約も重要です。
こまめな節約の手間をかけずに、より合理的に電気代を削減したい方は、お得電力や市場電力といった電力プラン自体の見直しも、ぜひ検討してみてください。




